ニンジン畑
子供のころ、どういうわけだか「ニワトリの足は4本だと言った大学生がいたこと」がマスコミで話題になった。そして、そんなこともあるものかとみんなが笑った。僕も笑った。小さい頃、実家の庭には茄子(なす)や胡瓜(きゅうり)がなっていた。秋になって収穫されたささやかな庭の野菜は母の手で食卓に上り、冬を迎えて父の手で糠(ぬか)漬けにされた。生姜をすってお醤油かけて、コリコリとお漬物を食べたものだ。
あの頃は、インターネットもパソコンも、ビデオデッキもコンパクト・ディスクもなかったんだ。ディジタルといえば、それはそのまま文字盤のない腕時計のことをみんなが想像できた時代だった。
今、自転車を止めて、住宅地の脇に広がるこの小さな畑の前でしゃがみこむ。この農作物は、ふだん口にしているものかもしれないし、もしかしたらこれは食べ物でないかもしれない。ニワトリの足は4本的に「これはニンジンだろう」としか想像できない。
僕たちはこの先、自然の営みに触れる日常を永久に放棄するのだろうか。太陽を仰ぎ、風に吹かれ、そして水のせせらぐ、そういう当たり前の生活に戻らなければいけないことに気づく時がくるのだろうか。電気で育つバーチャルなディジタル社会に僕たちの本当の居場所が作れるのだろうか。どうだろうね。
hanalei malte 著「life, love, and the internet」