ラジオ・ウェーブ

ラジオ・ウェーブ

「それではここでお便りを紹介します。」

「こんにちは、僕は北海道稚内に住んでいる中学三年生です。夏も終わり、これからここ稚内は駆け足で冬へ向かいます。『ラジオ深夜便』は毎晩、受験勉強をしながら聴いています。この放送を聴いていると安らぐのです。内容のよくできた教科書といった感じの放送だと思います。学校では休み時間にこの番組について毎日、友人と話し合っています。」

「この番組を中学三年生が聴いてくれているのですね。そして毎日、学校で話題になっているのですか。本当ですかね?信じておきましょう。それではここで音楽をどうぞ。ポール・モーリア・オーケストラ ”蒼いノクターン”。」

「♪♪♪♪♪・・・ (眠り) ・・・」

「・・・、第二中隊長をしていた私は、そのまま前線を北へ移しながら進軍しておりました。戦況は決して芳しくなく、やがて次々と行く手を敵に阻まれ、重ねて要請している援軍も未だ到着せず、ただ包囲され孤立しゆくままでした。そして、終戦を知らぬままロシア南方にて8月15日を迎えました。終戦を知ったのは12日遅れ、その月の27日のことです。連絡兵がようやく私たちの部隊を探し当てたのです。終戦を知らされたとき、私はなんだかホッとしたことを覚えています。その後、私たちは捕虜となり、一週間野宿を繰り返しての行軍、そしてとある小さな駅で貨物列車に押し込まれ、ロシアの寒い町へ連行されました。冬は零下50℃にもなりました。ここで私たちは・・・」

「お便りはまだまだ続くのですがこの辺りで区切らせて頂きます。このお便りの最後は、『今の子供たちはこのような状況に耐えられるでしょうか?いや、決してそういう目には会わせたくないものです』と締めくくられています。東京都Tさんからのお便りでした。」

『ラジオ深夜便』とは、NHKが発信するラジオの深夜番組です。NHKラジオ第一放送で夜11時15分から明朝5時までのオンエアです。僕も寝るときはこの放送にラジオのダイヤルを合わせて床に就きます。当初はどちらかと言うと中高年向けラジオ深夜番組としてスタートしたのですが、次第にリスナーの裾野は広がり、今や中学生だって聴いているのです。世代を越え、地域を越えて、深夜、さまざまな境遇の人々をつなぐこの番組は、核家族化した現代の頭上にかかる大家族「日本」の屋根なのかもしれません。

hanalei malte 著「life, love, and the internet」

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