slugs (ナメクジ)

slugs (ナメクジ)

こんなにじめじめした夜はあったろうか。シャツの襟首がじっとりと汗を含んだ。今夜、日本中のナメクジが闇の底から這い出して、全ての道路という道路を行進する。あとには銀色に光る粘液がキラリ、日本中のアスファルトを幾重にも覆うだろう。

ナメクジ、バンザァーイ!
ナメクジ、バンザァーイ!

僕はナメクジになって行進した。厚い雲は決して切れることなく、その上には乾いた月光の冷たく輝いた別世界があった。地上の闇は厚い雲に守られ、夜は果てることなく。

僕は何兆というナメクジの群集に交じって行進した。ナメクジになるのはそんなに悪い気分ではなかった。ナメクジにはナメクジの快適さが存在するのだ。ナメクジになって回想する。彼女の最後の視線が僕を流れたとき、その目にもう彼女はいなかった。それは僕の全く知らない人の視線だった。彼女は既に死んでいたのだ。僕はどうしてもそれを信じることができずにその夜、ナメクジになることを決意した。人を愛するという純真な行為が、同時に人を鋭利に傷つけていることに気づいて僕は今夜ナメクジになることを決意した。

こんな矛盾の存在する世界にもう用はなかった。

僕の記憶している彼女は、僕が最後に贈った Tomorrow Land のブラウスを着て7月の街角にいた。昼下がり、いつものカフェで軽いランチを取り、添えてあったエスカルゴをひとつ、おいしそうに食べた。

hanalei malte 著「life, love, and the internet」

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