リバランスの考察

リバランスの考察

はじめに

投資活動のルールを決める中で、リバランスについては検討に最も時間を要しました。自分に合ったリバランス方針を決めるに当たり、その経緯や理由を書き記しておきたいと思います。

まず、以下2つの項目については検討以前に決まっていた内容です。

  • 投資資産を新たに購入したり、売却/取り崩すときは、投資資産の比率が「オルカン:VGLT=70%:30%」に近づくように購入、又は取り崩す。
  • 可能な限り新NISA口座で購入し、特定口座から売却/切り崩す。

これから考察したいのは、既存投資資産の値動きによって評価額の比率「オルカン:VGLT=70%:30%」が変化したときのリバランスです。

リバランスにかかるコスト

リバランスについて考えようとしたとき、始めにリバランスを実行したときにかかるコストのことが気になりました。そのため、先にコストについて書き出してみます。各コストの比率や料金は国内主要ネット証券の設定を用いています。


「VGLT→オルカン」方向のリバランス

<前提条件>
特定口座のVGLTを1000ドル売却してオルカンを購入、
含み益10%、為替150円/ドル

<コスト>
◆ VGLT(USD)を1000ドル(150,000円)売却
↓コスト:売買手数料4.95ドル(742円)
↓コスト:譲渡益課税20.305ドル(3,047円)
◆ ドル口座に975ドル入金
↓コスト:為替スプレッド244円
◆ 円口座に146,006円入金
↓コスト:なし
◆オルカンを146,006円分購入(コスト合計:3,994円、約2.7%)


「オルカン→VGLT」方向のリバランス

<前提条件>
特定口座のオルカンを1000ドル売却してVGLTを購入、
含み益10%、為替150円/ドル

<コスト>
◆ オルカン(JPY)を1000ドル(150,000円)売却
↓コスト:譲渡益課税20.305ドル(3,047円)
◆ 円口座に146,953円入金
↓コスト:為替スプレッド245円
◆ドル口座に978ドル入金
↓コスト:売買手数料4.84ドル(726円)
◆オルカンを145,974円分購入(コスト合計:4,026円、約2.7%)


  • 注1:売買手数料は約定代金の0.495%(約定代金が4,444.45米ドル以上は22ドル)。
  • 注2:譲渡益課税は含み益の20.315%
  • 注3:為替スプレッド(25銭/ドル)

両方向のリバランスとも、コストがリバランスによる移行金額の約2.7%かかることがわかります(これは投資資産全体の約0.13%に相当します)。コストの内訳を見ると譲渡益課税が大半を占めています。上の例では含み益を10%と比較的低く設定しましたが、これが含み益30%になると譲渡益課税額が3倍になるため、おおよそ3倍近くのコストになります。私の投資環境では、リバランスのコストとして「売却資産の含み益が10%で売却金額の約2.7%がコスト、含み益が10%増す毎に2.5%程度のコストが上乗せされて行く」と認識したいと思います。

リバランスの目的を考察

「リバランスの目的って何なの?そりゃ、投資資産を増やすためでしょ。」

というのが私の漠然とした認識でした。リバランスについてはネット上で「Best practices for portfolio rebalancing(Vanguard Research, 2015/11)」というドキュメントに関する記述を何度か目にしていました(2024年現在、もう9年前のリリースですが)。このドキュメントによると、リバランスのやり方には百人百様の最適解が存在すると前置きした上で、「年に一度確認して、そのとき5%以上の乖離があればリバランスを行う」というのが概ねひとつの指標になっています。

「今年も年末だねぇ。どれどれ、今のポートフォリオは『オルカン:VGLT=80%:20%』だよぉ。『オルカン:VGLT=70%:30%』が私のルールだから10%の乖離だなぁ。5%以上乖離しているから今年はリバランスをやらないとなぁ。オルカンから全投資資産の10%分を売却してVGLTを買っておこうかね。」

こんなイメージですかね。この先人の知識を元に自分に合ったリバランスを考察してみたいと思います。私は投資資産を「オルカン:VGLT=70%:30%」ルールで運用しているので、まずはこの比率が5%以上乖離した時にリバランスすることを考えてみます。

リバランスによる資産増を計算

「オルカン:VGLT=70%:30%」で運用していた投資資産が、オルカンの下落とVGLTの逆相関による上昇で「オルカン:VGLT=65%:35%」になったタイミングでリバランスすることを想定します。

<オルカン下落時>

  1. オルカンが下落(オルカン:VGLT=65%:35%)
  2. 逆相関で上昇したVGLTを売って下落したオルカンを購入(VGLT→オルカン方向のリバランス完了、オルカン:VGLT=70%:30%)
  3. オルカンの反転上昇(オルカン:VGLT=75%:25%)
  4. オルカン反転上昇後に再度リバランスを実施し(VGLT=70%:30%)、安く買ったオルカンの反転上昇分の利益を享受するというシナリオです。

計算してみたところ、このシナリオで享受できる利益は総資産の0.5%程度でした。例えば、「オルカン+VGLT」の評価額100万円で上記シナリオを始め、シナリオ完了後に評価額は5千円程度増えているという計算です。2度のリバランスとオルカン反転上昇という不確定な未来を乗り越えて、ようやく0.5%の資産増というのはあまり割のいいものではない、というのが私の感想です。

その他、「VGLT下落時」「オルカン上昇時」「VGLT上昇時」やそれらの組み合わせで同様にリバランスが発生します。何れもリバランスによる資産増メリットはさほど大きくないという見解です。

リバランスの目的は何だろう?

今回、自分の投資環境でリバランスコストやリバランスで得られる予想利益を計算することで、リバランスをより身近に捉えることができました。これまでは、リバランスの目的は「投資資産を効率よく増やすこと」と考えていました。しかし、今ではリバランスで投資資産を増やすのは簡単ではないと感じています。例えば、「オルカンが50%暴落して、そこにどこかからかき集めてきた資金を一気に投入して反転上昇を待つ、晴れてオルカンが暴落前価格に戻ったときには投入した資金が2倍になって戻って来る」というシナリオは、理論的には正しそうだけど実現するのは私にはとても難しいです。理由は明白です。私には暴落時に一気に注ぎ込める資金も精神的余裕もありません。つまり暴落をポジティブに捉えて行動できるようなフィジカルもメンタルもないということです。

リバランスの目的が「投資資産を効率よく増やすこと」ではないとすると、リバランスに求めるメリット、目的は何でしょう?いろいろと考えながらもようやくたどり着いたのは「株式市場に居残るためのリバランス」です。今まで漠然としかイメージできなかったリバランスですが、そのメリット、目的が自分の投資に対する基本姿勢に帰結したことですっきりしました。

自分のリバランス方針

これまでの考察から、自分に合った「株式市場に居残るためのリバランス方針」をまとめてみます。

  • 「オルカン ⇄ VGLT」間の資産売買によるリバランスは実施しない。理由はリバランス実施にコストがかかるため。
  • ポートフォリオ比率の偏りを、追加購入時に比率の低い資産を購入、又は売却時(取り崩し時)に比率の高い資産を売却(取り崩し)することでリバランスする。
  • その他、可能な限り新NISA口座で購入し特定口座から売却/取り崩す。
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